※この記事は前回の記事に続いた内容となっております。よって、前回記事も合わせて読むことをおすすめします。
前回の記事↓
よく先生や塾の講師などにこう言われると思います。
「この問題集は◯周しろ!」
「この本を5周すれば偏差値は70に乗る」
私はこういった意見にいささか疑念を抱きます。
じゃあ5周終わった、ちょうどその瞬間に急に偏差値が上がるんでしょうか?
さっきまでは偏差値65だったのに、最後の一問を解ききった瞬間に偏差値が70になるのでしょうか。
そんなわけ無いですよね。
実際、多くの人は「〇〇を何周しているのに成績が上がりません」などと声を漏らしているのが現状です。
それに対して
「いや、理解が足りないからもう2周しなさい」
とアドバイスされ、沼にハマっていきます。
私自身、数学のテキストを何周も何周もやり込みましたが、模試や入試本番では解けない問題のほうが多かったです。
これはなぜなのか。
今回はそういった、問題演習への取り組み方とか、そういったことを記事にしていければいいなと思っています。
目次
多くの人の誤解「勉強=参考書周回」
これは多くの人に見られがちですし、実際私もそうでした。
多くの受験生は
参考書を周回すること=勉強
というふうに考えがちです。
確かに参考書や問題集を何周もして定着させることは大事だと思います。
しかし、とりあえずこれやっとけば大丈夫、などと、
妄信的に問題集を周回することが勉強の目的になっている人が多すぎます!
手段が目的化しているいい例です。
問題演習は一体何のためにやるのか?
問題演習の目的をしっかり意識して行きましょう。
問題演習によって得られるもの
問題を解くことはなぜ大事か?
それは、インプットの偏りや欠落を修正することができ、より知識を自分の中で体系化することができるからです。
こういった経験はありませんか?
一応教科書では習ったところだが、理解が曖昧な部分を、問題演習の中で出会うことで、
「あぁ、なるほど、こうやって使うのか、こういう意味だったのか」
というふうに理解・体系化できたことがあると思います。
数学でいうと、極座標など慣れないテーマに多いです。
教科書を読んでもよく理解できなかったり、理解したつもりになります。
が、問題演習を通して修正できます。
そしてより、知識を体系化(自分の中で自分なりに解釈)することができます。
反復の罠
問題演習は一回やっただけでは効果は薄いです。
反復練習はとても大事です。
何度も何度も反復することでより技術が洗練されていきます。
しかし、重要視されている反復にも罠があることを今から説明します。
次の図を見てください。
これは、、、
そう、イヌです。
イヌに見えなかった人は、ごめんなさい。
美術2の本気がこれです。
さて、イヌを知らない人が
この絵を一日30回見る、それを1ヶ月続ける、という典型的な反復学習を行ったとします。
そして、ある日この絵を見せられて「これは何でしょう」と聞かれたらどうでしょう??
もちろん、この絵を見せられたときは
「これはイヌです」
と答えられるでしょう。
何当たり前のこと言ってんだって思っている人は、我慢してもうちょっとだけ付き合ってください笑
今度はこの絵を見てください。
これは、、、
そう、これもイヌです。
上から見たイヌです!!!!
どう頑張ってもこれが限界でした!!すみません!!
さて、あなたは一枚目の絵(横から見たイヌ)だけを見続けてイヌを学習してきました。
そしてある時、この上から見たイヌの絵を初めて見せられたとき、「これはイヌです」と答えることはできるでしょうか?
おそらく、できません。
そしてあなたはこういうでしょう。
「イヌのイラストを一日何十回も見て反復したのに、違うイヌの問題を答えられなかった!!!なんで!!!」
それは、横から見たイヌのイラストだけを何回も何回も見て、これでイヌを完璧に理解した思い込んで、「わかったつもり」になっていたからです。
実際は、横から見たイヌの問題を答えられるようになっただけで、イヌという本質は理解できていなかったからです。
いろんな視点から見ることが大事
イヌのイラストの例でわかるように、単に横から見たイヌのイラストだけを見続けても、イヌという本質は理解できません。
しかし、これを読んでいる方はその辺にイヌが歩いていたら「あ、イヌだ」とわかるでしょう。
これはなぜかというと、あなたはイヌという動物を横からだけでなく、四方八方色んな視点から見てきたという経験があるからです。
ただ横から見たイヌのイラストだけでなく、イヌと実際にふれあい、手や顔を舐められ、彼らの息遣いを直に感じたからこそ、イヌという動物の本質を理解できているのです。
このように、ある事柄を学ぶ際には色んな角度から眺めるというのが重要になります。
単語を覚えるとき
色んな角度から眺めると言っても、まだイマイチイメージがつかない人も多いと思うので、他の例もあげてみることにします。
皆さんは英語日本語問わず、知らない単語を学ぶとき、どうやって学ぶでしょうか。
おそらくほとんどの人は、
単語の意味だけではなく、いろんな例文をみていろんな使われ方を通してその単語を学ぶと思います。
これもさっきのイヌの絵と同じで、一つの単語でも色んな角度から使われ方を見ることで、
やっとその単語を理解し使えるようになります。
問題演習にも同じことが言える
問題演習のときもこれは同じです。
問題には少なくとも1つ、テーマが隠れています。
例えば二次関数の問題なら
「最小値最大値の評価、平方完成…」
などと言ったテーマがあります。
あるテーマを学ぶとき、同じ問題一問だけをを何度も何度も解いたとします。
そこで本番でそれと同じテーマが扱われている問題が出たとき、対応できるでしょうか。
答えはおそらくノーです。
さっきの犬の絵の例と同じで、「二次関数の最大最小」などという、あるテーマを学ぶときは、
色んな角度からそのテーマを見なければなりません。
ある問題が解けても、それと同じテーマの類題が解けないことは多々あります。
それはつまり、そのテーマの理解が不十分だと言えます。
要するに、問題演習でも同じように、同一のテーマに対して様々な視点から捉えることが必要なのです。
一つの問題からは一つの視点からしかテーマを見ることができません。
効果的な問題演習のやり方
さて、長々と理屈ばっかりこねてきましたが、おまたせしました。
効果的な問題演習の仕方を説明します。
問題のテーマを意識する
数学の難しい問題でも、ほとんどの問題にはあるテーマが複数隠れています。
数学以外にも理科や地理でさえ、問題にはその問題が聞きたいテーマがあります。
それを意識しながら問題演習に取り組みましょう。
例えば、物理なら同じ問題に
「円運動の運動方程式」「単振動の運動方程式」
などというテーマが隠されています。
そして、もし解けなかったり理解が不十分だと感じた場合には
必ず教科書を読んで基本事項を確認しましょう!!
これがめちゃくちゃ大事です。
例えばセンター試験の浸透圧の問題で間違えた場合は、高確率で浸透圧の定義そのものがわかっていません。
このようにして、問題演習を通してインプットの欠落を埋めていきましょう。
問題を解くことだけに満足しないように。
色んな角度から見る
先程も言ったように、「浸透圧」というテーマなら色んな角度からそれを見てみましょう。
具体的には「浸透圧」の類題をたくさん解いてみてください。
一冊の問題集で足りないなら、他の問題集を”かじり読み”するように、同一テーマの類題を解いてみてください。
色んな角度から問題を解くうちに、自分の勘違いやインプットの欠落に気がつくはずです。
慣れてきたあたりが一番危険!!!
同じ参考書や問題を何周も何周も回していると、もう問題を見ただけで問題の解法や答えが頭に浮かぶようになると思います。
そうなってくると、周回スピードも上がるし、勉強してて気持ちが良いです。
しかし、この状態が一番危険だと思っています。
この状態というのは、問題の本質を理解しているというよりは、その問題の解答を解けるようになっているだけです。
問題が解ける、というのは問題の本質を理解していることの必要条件であり、十分条件ではありません。
そしてなによりも、この状態だとハイスピードで何問も解けるので、すでに解ける問題を何問もさらっているだけで、なんの進捗もないのに、解いてて楽しいし解く問題数だけは多いので、勉強したつもりになってしまいがちです。
もう問題を見ただけで答えがわかる、という問題はもう次解く必要はありません。
その問題からこれ以上学べることはもうありません。
理解を深めたかったら、同じテーマを扱っている、かつ、違う視点から見た問題を解いてみることです。
医学部レベルでも多いミス:ただ問題の解き方・流れを覚えているだけ
忘れまいと5回も6回も解き直す人がいますが、どうせ忘れます。そのうちすぐに解けなくなります。
完璧に解ける状態にしても入試ではあまり使えなかったりします。
なぜなら、大抵の場合、そもそもそのテーマの理解ができていないのに、問題の解き方をなんとなく覚えているだけだからです。
その問題を解けるようになっただけで、その問題の本質は理解できていないのです。
これは学びはじめの方に特に多いです。
同じ例題を何回も解いて、解き方を覚えているのでわかった気になりますが、
それをちょっとひねった演習問題に移ると、全く歯が立たない…
私もよくやっていました。
「私は断じて問題の解き方を覚えているわけではない!」
と自覚していました。
が、
結局、同一テーマが模試などで出題されたときには解けませんでした。
単一の問題の解き方の流れだけを覚えていたということを意味します。
なぜなら、そのテーマを完璧に理解しているなら初見でも解けるからです。
やはり、背景テーマの根本的な理解はできていなかったのです。
おそらく同じ問題を3周もすれば、次に同じ問題を見たときに
「これってこうやって解くんだったなぁ」
と覚えていると思います。
これって実は危険で、結局問題の解き方の流れ自体を覚えているようなもんなんですよね。
繰り返しになりますが、
同じ問題からは一つの視点しか得られません。
さらに、問題を何回も解くことで、勉強した気になります。
これが一番厄介です。
勉強してるし問題集も何周もしてるのに、成績が上がらないという人はだいたいこのタイプです。
ちゃんとその問題のテーマが理解できていたら、何回も何回も問題を解き直す必要はありません。
理解できていたらそもそも初見で解けますからね。
これを防ぐためにも、問題の解き直しはほどほどに。
解き方を覚えているだけ状態にならないように、他の類題もたくさん解く事が大事です。
※典型問題は別
しかし、ここで一つ注意があります。
チャート式の中でも比較的かんたんな問題のような、超超基本レベルの典型問題は、ほぼ無意識に手が動くくらいスラスラ解けないとまずいです。
こういった典型問題に限っては、何回も繰り返しといて練習しておきましょう。
解き方の流れを覚えておく必要があります。
結局、参考書は何周すべき?
回数に縛られないようにする
ここまで、同一の問題を何回も解くよりも、類題をたくさん解けといってきました。
もちろん、同一の問題を何周もすることは重要です。
しかし、
個人的には何周とかそういった数字に縛られないほうがいいです。
参考書を何周すべきか、とか、そういった議論は本当にナンセンスです。
回数を意識するあまり、そればかりに固執してしまいます。
同じ問題を10周して解き方を覚えただけなのに満足して、
いざ本番で類題が出ると全く解けないなんて、悲惨すぎます。
別に1周で終わらせようが10周しようが、個人の自由だと思います。
しかし、問題数と周回のバランスはしっかり考えましょう。
横から見た犬の絵を100回見るより、上下左右から見た絵を10回ずつ見たほうが効果的です。
3問を10回解くよりも、10問を3回解いたほうが効率がいいです。
問題を解き直して、完璧ではなくともなんとなーくわかってたら十分です。
このくらいになれば、完璧に解けなくとも同じテーマの類題を解いて経験を増やしましょう。
何回もいいますが、最初のうちはやはり問題を解き直しても、解き方を覚えているだけになってます。これは優秀な人でもそうです。
学び始めた最初の時期こそ、問題数を稼ぐようにしましょう。
ひとこと
最後に、私の体験談を紹介させてください。
急な自分語りになりますが、私は英語が得意でした。そして数学が大の苦手でした。
英語はセンターで97%、二次で85%と、入試での総合得点率は9割を越えています。
しかし、英語に関してなにか問題集を周回したとか、そういった事は全くありませんでした。
いろんな構文や単語をいろんな文を通してインプットしていきました。
一方、数学に関しては二次で6割と、大した結果は残せませんでした。
しかし、持っていたテキストや問題集を最低5周くらいはしていました。
それでも、本番では全然だめでしたね。
今になって何が足りなかったのかわかります。
そう、
圧倒的に量が足りませんでした。
勉強時間という意味ではありません。
ここでは経験値という意味です。
数学に関しては解いた問題数が圧倒的に少なかったのです。
回数ばかりにこだわっていました。
そして問題の解き方を覚えているだけ状態になり、似ている問題は完璧に解けましたが、
ちょっとした応用になるともうお手上げでした。
そして今になって思うこと。
それは
一つの問題を10回解いて完璧にする<<<<<<<10個の問題を通してその分野を理解する
ということです。
これを読んでくれたみなさんも、解いた回数よりも演習量を意識して行くようにしてみてください。
3ヶ月後に目に見えて成果が現れるでしょう。
それでは~( ´ ▽ ` )ノ